マンション建て替え時の危ない業者の見分け方1
アパートにしても、賃貸マンションにしても、この世にひとつしかない土地を活用するわけだから、建物を建てるとき、または建て替えるときは、何かと不安になるものだ。
勢い、知り合いの工務店に、知り合いの棟梁に、ということを考え勝ちになる。「知り合いだから、うまくつくってくれるだろう」という思いがあるのだ。
だが、知り合いの工務店に、知り合いの棟梁にというのでは、あまりにも安易すぎる。知り合いだからこそ、返ってマイナスになることだってある。
例えば八王子在住のAさん。マンション経営を計画して、親の代からの知り合いの棟梁に、建て替えを頼むことにした。しかし、知り合いというだけで、不都合が生まれてしまった。
「親の代からの知り合いということで頼んだんですが、やはり、不都合が多いですね。たとえば、建築現場をみていて、不備をみつけたとします。そんなとき、まったく知らない棟梁だったら、強い口調で文句もいえますが、知り合いとなると、やはりあいまいな文句で終わってしまうんです。ビジネスだといって割り切れないものなんですよ。本当は、割り切ってしまう必要があるんでしょうが、なかなかね」
こんな経験をした人も多いことだろう。
自宅だったら、まだ許せる。だが、マンションは人に貸して、収益を上げるものである。ただ単に、知り合いだからということで、安易に考えることほど危険なことはない。
いま、マンションは、外観デザインにしても内外装にしても、高級感のある、ハイグレードなものが求められている。棟梁といわれる人の中には、昔気質の人が多く、なかなか時代の流れについていけない人もいる。
案の定、Aさんは、六年後に、そのマンションをまた建て替えている。
「考え方というのか、センスというのか、時代にマッチしていなかったんですよ。仕方がないから、建て替えました。考えてみると最初の建て替え費がムダでしたね」
Aさんのように、資金的に余裕があればまだいい。建て替えることができるから。
しかし、多くの経営者は、おいそれと建て替えるというわけにはいかない。最初に建てたマンション何とか長持ちさせ、経営していかざるを得ないのだ。それだけに、建築業者選びには、より慎重さが望まれるわけだ。
アパート、賃貸マンションブームの中で、多くの業者がこの分野に乗り出してきた。昔から、住宅一筋に歩いてきた業者もいれば、つい最近になって、この分野に乗り出した業者もいる。
この中から、大切な財産を任せる業者を選ぶのだから、こんなに難しいことはないだろう。
よく「大手住宅メーカーに頼めば安心していられる」という人がいる。大手住宅メーカーには、マンション建築のノウハウもあり、経営に対するバックアップ体制も整っている。そして、いろいろな商品群を揃えている。だから、安心できるというわけなのだろう。
だが、ここでちょっと考えてみたい。実際に建物を建てるのは大手住宅メーカーでもなんでもない。大手の下請け会社、いわゆる町場の工務店が建てるのだ。
大手という名に惑わされ、苦い経験をした人がいる。相模原市のBさんだ。
Bさんがマンション経営に乗り出したのは五年前のこと。新聞広告で大手住宅メーカーの商品を知り、建てることにした。
「誰だって、大手という名前がついていると安心しますよね。私もそうでした。でも、実際に建てるのは、下請けの工務店なんですよね。あるとき、仕事があまり乱暴なんで、文句をいったことがあるんです。棟梁にいうと『上にいってくれ』という。つまり、大手住宅メーカーにいってくれというわけです。そこで電話をしたら『現場の棟梁にいってくれ』という。つまり、タライ回しなんです。それからですね。大手という名前だけを頼りにしてはいけないと思ったのは」
大手住宅メーカーの名前はあるが、こちらの苦情や文句に対してはなかなか対応してくれない。よくある話である。
「どんな建物を建てるか」ということと同時に、「どこに建築を頼むか」ということも大きなポイントである。
いま、アパートや賃貸マンション間の競争が激しくなっている。これを勝ち抜くための工夫、アイデアが欠かせなくなっている。土地の立地条件から始まって地域の入居者の動き、賃貸需要の動き、周囲の環境など、すべてに合ったプランを考え、家賃を設定することが求められている。
だから、建築を頼む業者は、土地の診断から経営管理、アフターサービスまで、すべての面で面倒をみてくれる業者をさがす必要がある。
そうなると、大手住宅メーカーということになるわけだが、望月さんのようなことも往々にして起こることがある。
建築を頼む業者は、何も会社の規模で決める必要はない。地域の事情精通した、アパートや賃貸マンションを得意としている業者を選ぶことが必要なのだ。建築業者にも、得手、不得手がある。その辺りを見極めることも欠かせない。